法定後見制度と任意後見制度についての講義を行いました

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

本日(令和4年2月20日(日))、埼玉県社会福祉士会権利擁護センターぱあとなあ埼玉主催の『第36回 支援者のための成年後見活用講座』の講師を務めました。

主に、法定後見制度と任意後見制度の概略について解説をしました。

 

講座参加者の方の中には、地域包括支援センター職員の方も多く、法定後見制度と任意後見制度に、高い関心を示されていました。

以下、簡単に説明をしたいと思います。

 

成年後見制度には、以下の2種類があります。 

・法定後見制度(成年後見・保佐・補助の3つ)

・任意後見制度

 

【任意後見制度とは】

本人が任意後見受任者との間で、あらかじめ公正証書によって締結した任意後見契約に従って、本人が精神上の障害により判断能力が不十分な状況になったときに、任意後見受任者が任意後見人となり、本人を援助する制度

である。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに任意後見契約の効力が生じる。(任意後見法4条1項、2条)

 

では、任意後見制度はどんな人が利用しているのでしょうか?

 

【具体例1】

知的障がいのあるお子さんA君のご両親が、自分たちが亡くなったときにA君をお願いする人を探している。

お願いをする人は誰でも良いわけではない。この人に、というこだわりがある。

→任意後見制度にしよう。

【具体例2】

私は生涯未婚で、子どももいない。両親も既に亡くなっている。

兄弟や甥っ子は、私にお金の無心ばかりするので、将来頼りたくない。私が認知症になった場合に、誰も成年後見人の申立てをしてくれないかもしれない。あらかじめ頼む人を決めておこう。

→任意後見制度にしよう。

 

【法定後見制度のメリット】

1.費用が安い。(通常、成年後見人1人分の報酬で済む)

2.悪用される可能性が低い。(最初から裁判所の監督があるため)

【法定後見制度のデメリット】

1.親族がいない場合に、上手く市長申立てをしてもらえないと、いつまでも必要な人が成年後見人制度を利用できない場合がある。

2.好きな人を成年後見人に選べない。本人親族からして当たり外れがある。

 

【任意後見制度のメリット】

1.好きな人を任意後見人に選べる。 

2.任意後見契約は自由度が高いので、事前にお願いしたいことについて、細かいオーダーをすることができる。

【任意後見制度のデメリット】

1.最終的に、任意後見人と任意後見監督人の2つの費用がかかるので、費用が高くなりがちである。

 ⇒この対策として、任意後見人は本人の親族が無償でなり、任意後見監人にだけ報酬を払うという方法もあります。

2.公証役場で任意後見契約を締結するにもお金がかかる。

3.好きな人を選べる反面、親族間の対立紛争に利用される。

市民後見人の普及について

 こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 今日は、市民後見人についてのお話をしたいと思います。

 2021年12月15日、厚生労働省の専門家会議で、地域住民による「市民後見人」の育成を強化することが柱としてあげられました。

 国内には認知症の人だけでも約600万人いるとみられますが、成年後見の利用者は昨年末時点で約23万人にとどまります。

 後見人の8割が親族以外で、うち9割を弁護士や司法書士などの専門職が占めています。家族や専門職でない市民後見人はわずか1%です。

産経新聞の記事を引用しています。)

 

【そもそも、市民後見人とは】

 いわゆる社会貢献型後見人として、本人と親族関係になく、また専門職でもない市民を選任する場合、その後見人を市民後見人と呼んでいます。

 主として、区長申立ての事案において、候補者として市民後見人が挙げられている場合に同人を選任しており、また、この場合、その支援団体となる当該地区の社会福祉協議会などを成年後見監督人などして選任している実情にあります。

 または、数は少ないですが、後見センターでは、当初は専門職後見人がその後、専門職の関与が必要なくなった段階で、市民後見人に成年後見人を変更したという事例もあります。

(『家事事件・人事訴訟事件の実務』東京家事事件研究会 編 より引用しています。)

 

 村松も、成年後見人をしていた事案を、法律問題が整理できた時点で、市民後見人(身上監護)と社会福祉協議会(財産管理)に成年後見人を交代(バトンタッチ)していただいた経験があります。

 以下、村松なりに市民後見人のメリットとデメリットを記載したいと思います。

 

【市民後見人のメリット】

・近隣住民が多いので、本人と会う機会が多い。

 →身上監護が手厚い。

【市民後見人のデメリット】

・無償でするには、成年後見人の仕事の責任が重い。

・専門職ではない近隣住民に、自分のお金の状況を知られるのは抵抗感がある。この問題は、特に地方の場合に深刻である。

 

 

 村松個人の意見としては、市民後見人制度の導入に賛成なものの、デメリット解消のため、以下の2点の運用をすべきであると考えています。

 

 1点目は、市民後見人にも実費以外の最低限度の報酬は支払われるべきであるということです。

 本人の資産から支払うのが難しいとしても、専門職より低くても、最低限の月5000円から1万円程度の行政の助成が必須であると考えます。

 成年後見人の責任は重く、無償でやるには責任が重い仕事です。最低限度の手当ては普及には必要と考えます。

 

 2点目は、身上監護は市民後見人に任せるものの、財産管理を社会福祉協議会がするなど、分業をすることです。

 これにより、市民後見人に本人の財産状況を知られることはなくなるため、専門職ではない近隣住民に自分のお金の状況を知られるのは抵抗感がある、との市民後見人のデメリットを打ち消せると思います。

 

 市民後見人としても、養成講習をしただけで、何らのフォローもないのは職務をする上で不安だと思いますが、社会福祉協議会が常に関わることで安心感があり、市民後見人をトライしやすくなると思います。

 

 市民後見人は、まだまだ普及率も低く発展途上の制度です。

 しかしながら、認知症の方が今後も大幅に増えることが予想されることからすると、市民後見人のニーズは今後も増えることが確実で、より市民後見人が普及しやすい制度設計が求められると思います。

第24回精神保健福祉士試験を受験しました②

 こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 今回は、前回の記事の続きで、第24回精神保健福祉士国家試験(専門科目のみ)の受験についての、村松の受験勉強について記載いたします。

 忙しい社会人の方に、少しでもご参考になればと思います。

 

1.ダブル受験はきついので、分けて受験しましょう

 福祉系の学生の方は、社会福祉士と精神保健福祉士のダブル受験をする方が多いですが、忙しくて勉強時間が取りづらい社会人にはお勧めしません。

 村松は、社会福祉士を合格した後に、精神保健福祉士を受験したので、共通科目免除となり、今回は専門科目のみなので、気持ちがかなり楽でした。

 

2.精神保健福祉士は、素敵なテキストが少ない

 社会福祉士と比べて、受験用のわかりやすいテキストは少ないです。

 中央法規の「受験ワークブック」は、分厚いし、持ち歩くのに不向きです。忙しい社会人がこれを通して読むのは時間的に難しいと思います。

 中央法規の「見て覚える国試ナビ専門科目」がコンパクトにまとまっており、まだお勧めです。

 これを通勤の電車の中で、パラパラ見るだけでもいいと思います。

 

3.過去問を解きましょう

 「過去問を3年分できればベストだ」と思います。

 ちなみに、村松は偉そうに言っていますが、本業の仕事が忙しく、勉強時間が取れなかったので、第23回国家試験を事前に何とか解いて、第22回国家試験の過去問は、受験当日の朝から解くというより読んでいました。村松流は、皆様にはお勧めしません。

 通常、試験当日は、過去問の間違えたところを重点的にするべきですが、村松はそれだと過去問1年分しか事前に解けなかったので、新規の問題を見て、わからないことも多く、試験直前に不安になりました。

 皆様は、できれば試験前日までに過去問3年分を解いて、当日は復習のみをする、という王道をお勧めします。

 

 次回は、今回の試験を受けた試験内容の雑感について記載したいと思います。

 

 

第24回精神保健福祉士試験を受験しました①

 こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 令和4年2月5日(土)、第24回精神保健福祉士国家試験を受験しました。

 村松は、社会福祉士の資格を有しているため、共通科目が免除となり、精神保健福祉士の専門科目のみ受験をしました。

 受験会場は、流通センター駅のTRC(浜松町から東京モノレールに乗ります)です。以下、受験の感想を記載いたします。来年、受験する方の参考になればと思います。

 

1.着脱できる暖かい服を着て行ったほうが良い

 まず、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、試験中も換気をしていました。

 そのため、試験中もとても寒いです。試験直前に、寒くてトイレに行く方もいらっしゃいました。

 

2.試験会場には早めに行きましょう

 かなり試験会場が広いので、迷子になる人もいると思います。私も午前11時半ごろに会場につきました。

 その分、試験会場が開くまでは、外で待っているので寒いです。

 

3.お昼は持参をした方が良いかもしれません

 近くにローソンがあります。しかしながら、かなり混むので、できれば、お昼は持参をした方がいいと思います。

 ローソンを利用するのであれば、現金以外のSUICA(スイカ)などの決裁であれば、セルフレジを利用できるので、少し並ばなくて済むかもしれません。

 村松も、おにぎりと暖かい飲み物をSUICAで購入したので、それほど並ばなくて済みました。

 

4.トイレは早めに行きましょう

 試験会場の女子トイレはとても混み合います。

 

5.絶対に鉛筆を持っていきましょう

 シャープペンは危険です。

 試験開始直前に、机に置いて良いものは、消しゴム、鉛筆、シャープペン、カラーペン、ティッシュなど拭くものだけです。筆箱もお茶等の飲み物も禁止です。

 そして、なんと「シャープペンの替え芯も机に置いてはダメ」と試験官に言われました。

 衝撃です。シャープペンの中にある芯がすべて折れたら、マークシートを塗りつぶすことができず、アウトです。

 試験官に言えば、鉛筆は借りることができると思いますが、できれば鉛筆を持参した方がいいと思います。

 

 次回は、精神保健福祉士の勉強法について記載したいと思います。

 

桜田ベンゴが新埼玉法律事務所に来ました

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

新埼玉法律事務所にも、埼玉弁護士会(←クリックでホームページが別窓で開きます)の公式キャラクターの『桜田ベンゴ』が来ました!

背中の六法全書がカワイイですね。埼玉弁護士会の認知度アップに貢献してくれると思います。

  

離婚調停に子どもを連れて行ってもいいのでしょうか?

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

本日は、離婚調停の際によく聞かれる、

「Q 離婚調停の際に、裁判所に子どもを連れて行ってもいいのでしょうか?」

という質問にお答えします。

 

A 事前に裁判所に相談をして下さい。

 事前にご相談いただけないと、お部屋の関係など、裁判所も困ってしまいます。

  そこで、調停の係属証明書や調停員から渡される調停期日のお知らせの紙を提出して、保育園の一時保育を利用して、お子さんを保育園に預けて、調停に出席される方もいます。

 どうしても預け先がない場合や、一時保育を利用する金銭的な余裕がない場合には、自宅や代理人弁護士の事務所の電話で、調停を実施できる場合があります。

 当事務所に、離婚調停事件などについて依頼を受けている方の場合、お子さんを連れて新埼玉法律事務所にお越しいただき、お母さんが裁判所と電話調停をしている間に、お子さんが別の部屋に待機できる年齢であれば、別の部屋で遊んで待ってもらうこともできます。

 

 私が弁護士になりたての頃など、電話会議もなく、どうしても依頼者の方が、ご自身の赤ちゃんを裁判所に連れて行かなくてはならず、離婚調停中に赤ちゃんが泣き出してしまい、村松が赤ちゃんを抱っこして、裁判所の廊下をふらふら歩いたこともあります。

 また、赤ちゃんの場合にはいいのですが、4歳以降になってくると、いろいろな言葉もわかってくるので、離婚調停の際にお子さんを同席させることが望ましくない場合もあります。
 離婚調停は、相手方(子の父親)を悪く言う部分もあり、お子さんのアイデンティティを傷つけない観点から、あまり離婚調停の内容をお子さんに聞かせない方がいい場合があります。

 しかしながら、お子さんを祖父母や保育園などに預けられる環境が整っている方ばかりではないので、臨機応変に対応せざるを得ないと思います。


判断に迷われた際には、事前に裁判所や担当弁護士にご相談下さい。

認知症初期集中支援チームのサポート

 こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 本日は、認知症初期集中支援チームについてお話をしたいと思います。

 私は弁護士・社会福祉士として、成年後見人を利用したいというご家族から、以下のような相談をよく受けます。

 

Q 父が認知症のようです。しかしながら、父は「自分が元気だ!」と言い張っていて、なかなか病院に行ってくれません。どうしたらいいでしょうか。

 成年後見の申立てもしたいのですが、医師の診断がないと難しいと言われてしまいました。どうにかして、父に病院に行ってもらう方法はないのでしょうか。

 

A 認知症初期集中支援チーム(←クリックで、さいたま市ホームページが別窓で開きます)のサポートを利用する方法もあります。

 認知症初期集中支援チームとは、認知症サポート医、医療・福祉・介護の専門職(看護師、精神保健福祉士、社会福祉士等)で構成される、認知症の支援チームです。

 さいたま市では、「認知症初期集中支援チーム」を5チーム設置し、認知症の方や認知症の疑いのある方、また、その御家族に対し、早期対応の支援を開始します。

 

 認知症の方も、なかなか家族の言うことは聞いてくれないけれど、第三者である看護師や社会福祉士が病院に付き添うことで、病院の受診を断固拒否していた認知症の方の態度が和らぐことがあります。

 対象となる方は、さいたま市内に居住する40歳以上の方で、在宅で生活しており、かつ認知症が疑われる方又は認知症の方で、次のいずれかに該当する方。

①医療サービス、介護サービスを受けていない方、または中断している方で以下のいずれかに該当する方

・認知症疾患の臨床診断を受けていない方

・継続的な医療サービスを受けていない方

・適切な介護サービスに結び付いていない方

・介護サービスが中断している方

②医療サービス、介護サービスを受けているが、認知症の行動・心理症状が顕著なため、対応に苦慮している方

 

 まず、チームの利用にあたっては、地域包括支援センター又は各区役所の高齢介護課にお問い合わせください。

図書館を使った調べる学習コンクール

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

私の知人のお子さん(小学生)が、「図書館を使った調べる学習コンクール」に応募して、入賞したとの連絡を受けました。

実は、そのお子さんが調べるテーマの中で、「弁護士にインタビューをしたい」とのことでしたので、そのインタビューにお答えしたのです。

 

お子さんの質問には、「明らかに悪いことをしたと思われる人でも、弁護しなくてはならないのですか?」など、なかなか高度なものも含まれていました。

お子さんの入賞、おめでとうございます。また、弁護士の業界に興味を持っていただけてよかったです。

弁護士ドットコム様にインタビューを掲載していただきました

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

今回、弁護士ドットコム様に、私のインタビュー記事を掲載していただきました。

 

弁護士になったきっかけ、仕事をする上での考え方、問題意識など・・・

自己紹介的な内容を、よくまとめていただきました。

(弁護士ドットコム様、ありがとうございました。)

以下、インタビュー記事を引用いたします。

「離婚などと子どもに関する法律手続き」の講演をしました

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

https://www.pref.saitama.lg.jp/withyou/event/list/0919ikikata.html

 本日、With You さいたま(埼玉県男女共同参画推進センター)様主催の『生き方セミナー』で、「離婚等と子どもに関する法律手続き」というテーマで講師を務めさせていただきました。

    離婚と子どもに関する法律手続きということで、親権・養育費・面会交流についてお話をしました。

 

 皆様、特に面会交流に関する関心が高かったので、本日はここで少し面会交流についてお話をします。

 まず、一般的な面会交流の頻度についてお話をしたいと思います。

 一般的に、面会交流の頻度は月1回程度と決められることが多いですが、お子さん・お母さん・お父さんそれぞれの予定を合わせると、2か月に1回程度になることも少なくありません。

 特に、子どもが大きくなるにつれて、離れて暮らすお父さんと会う時間よりも、部活や友達との約束を優先したいと思うお子さんが増えていきます。

 このために、最初に決めた面会交流の条件では、子どもの成長とともに、子どもの意向と合わなくなってしまうことがあります。

 

 面会交流は、会えない非監護親の権利ではなく、あくまで子どもの福祉(子どものため)になされるものです。

 この「子どもの福祉」というのを誰がどう決めるのかが難しい問題です。

 一般的に、10歳以上のお子さんの意見は、面会の許否を判断するにあたり、ある程度その意向を尊重する傾向に裁判所もあります。

 しかしながら、お子さんも個性があり、はっきり自分の意見が言えるお子さんや、両親双方に気を遣い、自分の意見が言えないお子さんなど、精神年齢もお子さんによりさまざまです。

 面会交流は、これが正解ということが簡単に決まるものではなく、本当に個別具体的なケースに応じて考えていかなければならないことを、講義の中でも強調させて頂きました。

 

 しんぐるまざぁずフォーラムのスタッフの方、With You さいたま職員の方、本当にありがとうございました。御礼申し上げます。