2019年 3月 の投稿一覧

成年後見制度について ~報酬の見直し~

こんにちは。弁護士・社会福祉士の村松綾子です。

今回は、成年後見制度の最新トピックについてです。

 

 最高裁判所が、全国の家庭裁判所に、成年後見人の報酬算定方法の見直しを求める通知書を出しました。

(参考記事:https://mainichi.jp/articles/20190323/k00/00m/040/337000c

 

 現在は、後見を受ける人(成年被後見人)の資産に応じた定額報酬が一般的です。しかし、今後は、実際の業務量に応じた算定に改めることがメインのようです。

 最高裁判所によると、現在、報酬に全国統一の基準はなく、個々の裁判官が利用者の資産額などを考慮して決めています。

 実際の後見の業務量、特に身上監護については報酬にあまり反映されていません。

(※身上監護:成年被後見人の日常生活を見守り、環境を整える行為。例えば、老人ホームの入居契約等)

 

 正直、私の印象としても、お金のない成年被後見人ほど、いろいろなサービスを使えないので、成年後見人の業務量は多くなります。業務量が多いのに報酬が低くなるので、資産の少ない人ほど成年後見人がなかなか見つからないケースが多いです。

 また、そもそも成年後見制度が必要なのに、月々の費用が捻出できないために、成年後見制度の利用を躊躇しているケースもあります。

 

 今回の、最高裁判所による後見人の報酬方法を見直すこと自体には賛成です。しかし、成年後見制度の利用を促進するためには、お金のない人の利用を促進する仕組み(例えば、行政の報酬の援助等)もあわせて進めていく必要があります。

裁判所の安全対策について

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032000872&g=soc

 

 東京家庭裁判所の玄関で、女性が刺されて死亡する事件が発生しました。

 亡くなられた女性は、離婚調停のために東京家庭裁判所に訪れたところ、夫である男性に首を刺されてしまったとのことです。

 

 離婚をしたくて裁判所を訪れたのに、法が守られるべき安全なはずの裁判所で殺されてしまうのでは、離婚をする権利や、選択肢すら奪われてしまいます。

 

 東京家庭裁判所では、手荷物検査を実施していますが、その手荷物検査が行われる前の玄関で刺されてしまうのでは、手荷物検査は全くもって防犯上意味をなしません

 

 今後、裁判所は、敷地内の警備員の増強や、玄関に機械の金属探知機をつけて金属反応があれば玄関に入れないゲートを設置するなど、早急な防犯安全対策をすべきです。

 

 亡くなられた方やそのお子さんのことを思うと、本当に言葉になりません。

 ご冥福をお祈りいたします。

成年後見制度について③ ~成年後見制度における専門家の役割分担~

こんにちは。弁護士・社会福祉士の村松綾子です。

今回は、成年後見制度における専門家の役割分担についてお話していきます。

 

 弁護士や司法書士の特徴として、法律の専門家ということで、法律には社会福祉士の方より詳しいという特徴があります(中には、社会福祉士の方でも、弁護士と同じくらい詳しいのではないかと思う方もいますが)。

 

 しかしながら、現状の成年後見制度の実務として、身上監護がとても大変なケースについて弁護士や司法書士が成年後見人に選任されている、あるいは逆に、法律問題がかなり複雑なケースについて社会福祉士が成年後見人に選任されているケースがあります。

 つまり、それぞれの専門職の特徴を活かした形で、裁判所が成年後見人を選任していないケースが散見されます。

(私自身、社会福祉士資格を取得するきっかけとして、成年後見人の任務を全うするには、介護保険制度や生活保護制度などの福祉の知識が圧倒的に不足していると自覚したことにあります。)

 

 さらには、身上監護も大変な上(例えば、本人が在宅で、週1回は訪問に行かなければいかなければならない等)、かつ財産関係も複雑(例えば、本人のお金を横領している親族がいる等)なケースもあります。

 このようなケースにおいては、弁護士・司法書士(法律の専門職)と社会福祉士(福祉の専門職)が、2名で成年後見人になった方が適切な場合もあると思います。

成年後見制度について② ~成年後見制度における社会福祉士の強み~

こんにちは。弁護士・社会福祉士の村松綾子です。

前回に続き、成年後見制度についてお話していきます。

 

 私は、身上監護を行う能力については、社会福祉士は、他の専門職より優れていると思います。

 なぜなら、弁護士・司法書士は、法律の勉強を資格取得までにするものの、福祉の勉強(具体的には介護保険等)について一切、資格取得にあたって勉強をしていないからです。

 

 私の尊敬している独立型の社会福祉士の方は、どの施設やどこのディサービスが、成年被後見人(本人)に適しているかなどを熟知しており、地域の社会資源に本当に精通しています。

 

 また、社会福祉士は、本人のストレングス(強み)を生かそうという発想が、他の専門職に比べて高いという特徴があると思います。

 この点、弁護士・司法書士は、法律の専門家という側面から、いつも最悪の事態を想定しつつ、極端にリスクを回避する発想になりがちです。本人の弱みやリスクばかりに目が行く傾向があると思います。

(例えば、徘徊症状がある認知症の方を在宅支援することについて、その方が電車ではねられて多額の賠償請求が来ないように、できるだけ施設に入所させよう、等)

 

 そのような中で、社会福祉士が、本人の意思を尊重して、本人のストレングスを活かすという視点で身上監護を行うことが今後もますます求められると思います。

成年後見制度について① ~そもそも成年後見制度とは~

こんにちは。弁護士・社会福祉士の村松綾子です。

今回からは、成年後見制度について、制度の紹介及び私見を述べていきます。

 

 成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などの理由で判断能力が不十分な方を保護し、代わりに預貯金などの財産管理や身上監護をする制度です。

 

 本人を支援する成年後見人に、親族以外の第三者が選任されたものは全体の76・8%にも及んでおり、そのうち司法書士が10512件(37・7パーセント)、弁護士が8151件(29・2パーセント)、社会福祉士が4835件(17・3パーセント)選任されています。

(最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 平成30年1月から12月http://www.courts.go.jp/about/siryo/kouken/index.html

 

 先日、最高裁判所は、基本的な考え方として、後見人にふさわしい親族など身近な支援者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましいと提示しています。

(参考記事:https://www.asahi.com/articles/ASM3L54SDM3LUCLV00X.html

 

 そもそも、大都市圏(もちろん埼玉県も含む。)では、親族関係が希薄となっていますし、子どもがいない世帯も増えています。そのような状況では、後見人にふさわしい親族がいない人も多く、親族以外の第三者が選任されるケースは今後増えると思われます。