こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

認知症や障害で判断力が衰えた人を支える成年後見制度は、今年で導入20年となりますが、

後見人の報酬額や仕事内容に関して利用者の評判が悪く、利用の伸び悩みが続いている

という記事が、昨年(2019年6月5日)の毎日新聞に掲載されました。

 

成年後見制度の評判が悪い理由について、私なりに考察したいと思います。

 

成年後見人が自由に選べない

成年後見人は、約2割が親族、約8割が司法書士・社会福祉士・弁護士等の専門職が就任します。

そのうち、専門職の当たり外れが大きいというのが、成年後見制度への不満につながっていると思います。

 

たまたま成年後見人になってくれた弁護士が親切で話しやすく、面会にも頻繁に来てくれるという場合と、本人への面会が今まで1度しかないというのでは、成年後見人への家族の満足度が異なるのは当然です。

今後は、専門職の間でもサービスが均質になるような詳細なルール作りが必須だと思われます。

 

成年後見制度の導入にあたって、十分に説明がなされていない

成年後見制度は、①1度始めたら辞められない、②本人の財産を守る制度なので基本的に財産の運用ができない、③裁判所に年1回財産の報告をしなければならない、などの注意点があります。

 

しかしながら、成年後見制度の導入を考えている方に対して、裁判所や専門職が成年後見制度の注意点の説明が不足している場合が多々あります。

そうすると、当事者の方からすると、成年後見制度をいざ始めた後に、「思っていたのと違う、でも途中でやめられない。」という不満が残ることになります。

 

障害者虐待・高齢者虐待などの緊急性を要する場合は別ですが、特に緊急性が高くない場合には、家族の方への丁寧な説明は必須だと思われます。

 

③低所得者に対する成年後見人の報酬助成の不足

成年後見制度は、基本的に月1万円~2万円程度のお金がかかります。

年金額が少ない方など、低所得の方は、自分で成年後見人の報酬を支払うことは現実的に難しいと思います。

後見人報酬などを助成する国の補助事業もありますが、実施していない自治体や、実施していたとしても生活保護受給世帯に限定する市町村や、市長申立て(市長が成年後見人の申立てをした場合)に限る自治体もまだまだたくさんあります。

 

今後は、自分で成年後見報酬を払うことができない方への行政の後見人報酬助成を充実していかないと、本当に必要な方が成年後見制度を利用できないことになりかねません。

 

【まとめ】

 以上、成年後見制度の評判が悪い理由について、述べてきました。

しかしながら、成年後見制度は本人の財産を守る制度であり、知的障害の方の親亡き後問題への備えとしてなど、成年後見制度を必要としている方もたくさんいらっしゃいます。

 今後は、現状の成年後見制度の良くない点を改善しながら、上手に利用していかなければ、超高齢化社会を乗り越えられないと思います。