こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。
本日は、成年後見人が医療行為の同意ができるのかについて、お話をしたいと思います。
医療行為の同意は、本人のみが行うことができる一身専属権であり、成年後見人に同意権はありません。
したがって、まずは本人に医療行為の同意について意思決定を行っていただくのが大前提です。
しかしながら、本人が認知症などで、医療に係る意思決定が困難である場合にどうするか?という問題があります。
家族のいる方は、まず家族の同意をとることになりますが、家族がいない人はどうするのでしょうか。
実際の現場では、家族がいない成年被後見人に成年後見人が就いている場合には、成年後見人に同意を求められることがあります。
例えば、認知症のおじいちゃんが交通事故に遭い、緊急の手術をしなくてはいけない場合に、おじいちゃんの成年後見人に同意権がない以上、医療行為を受けられないのもやむを得ない、という対応はとれるものではありません。
2004年1月発行の千葉家庭裁判所「成年後見人のしおり」では、「親族がいない場合、親族からの協力が得られない場合、緊急を要する場合、病院が特に求める場合には、救命に必要な医療措置として手術や治療への同意を求められたならば、後見人がその権限に基づいて、同意したり、同意書を書くことは差し支えないと考えられます」と説明しています。
このように、成年後見人には原則、医療行為の同意権がないとされているにもかかわらず、実際の現場では、医療行為の同意が求められるという矛盾があります。
今後、成年後見人の医療行為の同意については,立法で解決していくべきです。
詳しくは、日本弁護士連合会「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱」(2011年(平成23年)12月15日)をご参照下さい。