こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。
今日は、市民後見人についてのお話をしたいと思います。
2021年12月15日、厚生労働省の専門家会議で、地域住民による「市民後見人」の育成を強化することが柱としてあげられました。
国内には認知症の人だけでも約600万人いるとみられますが、成年後見の利用者は昨年末時点で約23万人にとどまります。
後見人の8割が親族以外で、うち9割を弁護士や司法書士などの専門職が占めています。家族や専門職でない市民後見人はわずか1%です。
(産経新聞の記事を引用しています。)
【そもそも、市民後見人とは】
いわゆる社会貢献型後見人として、本人と親族関係になく、また専門職でもない市民を選任する場合、その後見人を市民後見人と呼んでいます。
主として、区長申立ての事案において、候補者として市民後見人が挙げられている場合に同人を選任しており、また、この場合、その支援団体となる当該地区の社会福祉協議会などを成年後見監督人などして選任している実情にあります。
または、数は少ないですが、後見センターでは、当初は専門職後見人がその後、専門職の関与が必要なくなった段階で、市民後見人に成年後見人を変更したという事例もあります。
(『家事事件・人事訴訟事件の実務』東京家事事件研究会 編 より引用しています。)
村松も、成年後見人をしていた事案を、法律問題が整理できた時点で、市民後見人(身上監護)と社会福祉協議会(財産管理)に成年後見人を交代(バトンタッチ)していただいた経験があります。
以下、村松なりに市民後見人のメリットとデメリットを記載したいと思います。
【市民後見人のメリット】
・近隣住民が多いので、本人と会う機会が多い。
→身上監護が手厚い。
【市民後見人のデメリット】
・無償でするには、成年後見人の仕事の責任が重い。
・専門職ではない近隣住民に、自分のお金の状況を知られるのは抵抗感がある。この問題は、特に地方の場合に深刻である。
村松個人の意見としては、市民後見人制度の導入に賛成なものの、デメリット解消のため、以下の2点の運用をすべきであると考えています。
1点目は、市民後見人にも実費以外の最低限度の報酬は支払われるべきであるということです。
本人の資産から支払うのが難しいとしても、専門職より低くても、最低限の月5000円から1万円程度の行政の助成が必須であると考えます。
成年後見人の責任は重く、無償でやるには責任が重い仕事です。最低限度の手当ては普及には必要と考えます。
2点目は、身上監護は市民後見人に任せるものの、財産管理を社会福祉協議会がするなど、分業をすることです。
これにより、市民後見人に本人の財産状況を知られることはなくなるため、専門職ではない近隣住民に自分のお金の状況を知られるのは抵抗感がある、との市民後見人のデメリットを打ち消せると思います。
市民後見人としても、養成講習をしただけで、何らのフォローもないのは職務をする上で不安だと思いますが、社会福祉協議会が常に関わることで安心感があり、市民後見人をトライしやすくなると思います。
市民後見人は、まだまだ普及率も低く発展途上の制度です。
しかしながら、認知症の方が今後も大幅に増えることが予想されることからすると、市民後見人のニーズは今後も増えることが確実で、より市民後見人が普及しやすい制度設計が求められると思います。