2021年 6月 の投稿一覧

成年後見制度と予防接種の同意について

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 成年後見人として、社会福祉士の方から、認知症等の方の成年後見人になった場合、ご本人の予防接種についてどのようにすべきかと、問い合わせがありました。

 以下、私のできる範囲で回答をしたいと思います。

 

 前提として、

〇新型コロナウィルスの予防接種を受けることは、強制ではありません。

〇成年後見人には、原則として、本人である成年被後見人の医療行為の同意権はありません(以前のブログを参照して下さい)。

 

 しかしながら、例外的に、予防接種法上、成年後見人には、成年被後見人である本人の予防接種について同意権があるとされています。

 具体的には、予防接種法令上では、予防接種を受けるに当たっては、接種を受ける方又はその保護者から書面により同意を得ることとしており、この「保護者」には後見人が含まれます。

 以下、厚生労働省ホームページの、成年後見制度利用促進ニュースレター(令和3年3月22日)の、新型コロナウィルスの予防接種について記載されているものを、できる限りわかりやすく説明をします。

 

A.本人の意思確認ができる場合

 認知症と言っても、個人差があります。

 本人の意思確認ができる場合には、まず、成年被後見人である本人に、新型コロナウィルスの予防接種に関する必要な情報をしっかりと伝えてください。その上で、本人の意思を可能な限り確認してください。

 

① 本人の同意が確認できた場合

 本人による署名

② 本人の同意が確認できるが、本人の署名が困難

 代筆(*代筆するのは、成年後見人・施設の職員等)

③ 本人の同意は確認できるけど、本人に会えない場合

 オンライン面会ができる場合には、本人と直接話をして、必要な情報提供や意思確認をすることが望ましいです。 もしもそれが叶わない場合には、施設、医療機関等の職員に (ア) 本人へどのように情報提供したのか、(イ)本人がどのような状態でどのように意思表示をしたのか、 確認してください。また、その際には、 (ウ) 接種後の本人の様子の見守りを依頼し、変化がある場合には詳細に記録し、成年後見人に連絡が欲しいこと、を伝えてください。

 

B.本人の意思が確認できない場合にどうするか?

 (厚生労働省)ご本人の接種の意思を確認することが難しい場合は、家族や医療・ケアチーム等、成年被後見人ご本人の周りの方と相談しながらご判断いただくようお願いいたします。成年後見制度利用促進ニュースレターを引用しています)。

 

 なんだか、とてもあいまいな書き方です。家族がいない人、医療・ケアチームがない場合に、どうするべきなのか記載されていません。以下は村松の私見です。

 正解はありません。

 ただできる限り、成年後見人として、本人の意向を推測すべきですし、いろいろな情報を集めるべきです。

 

 具体的には、

・本人の家族に相談をする。

・本人の主治医・施設職員に相談をする。

・本人の意向を、今までの事情から想像する。

 結論として、その上で、成年後見人として同意をしてもいいと思います。

 あえて医療行為の同意権がないから、判断を主治医の先生に従います、ということもでいいと思います。

 

【参考】 

◆予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)抄

第二条七 この法律において「保護者」とは、親権を行う者又は後見人をいう。

◆予防接種実施規則(昭和三十三年厚生省令第二十七号)抄

(説明と同意の取得) 第五条の二 予防接種を行うに当たっては、あらかじめ被接種者又はその保護者に対して、予防接種の有効性及び安全性並びに副反応について当該者の理解を得るよう、適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。

◆接種を受けたことによる副反応について

(接種を受けた後に副反応が起きた場合の予防接種健康被害救済制度)

 一般的に、ワクチン接種では、副反応による健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が、極めて稀ではあるものの、なくすことができないことから、救済制度が設けられています。

 新型コロナワクチンの接種についても、健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく救済を受けることができます。 もし、成年被後見人等ご本人に健康被害が生じた場合は、ご本人の住民票のある市町村にご相談いただき、 申請書の準備等のサポートをお願いいたします。

成年後見人と医療行為の同意について

こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

本日は、成年後見人が医療行為の同意ができるのかについて、お話をしたいと思います。

 

医療行為の同意は、本人のみが行うことができる一身専属権であり、成年後見人に同意権はありません。

したがって、まずは本人に医療行為の同意について意思決定を行っていただくのが大前提です。

 

しかしながら、本人が認知症などで、医療に係る意思決定が困難である場合にどうするか?という問題があります。

家族のいる方は、まず家族の同意をとることになりますが、家族がいない人はどうするのでしょうか。

 

実際の現場では、家族がいない成年被後見人に成年後見人が就いている場合には、成年後見人に同意を求められることがあります。

例えば、認知症のおじいちゃんが交通事故に遭い、緊急の手術をしなくてはいけない場合に、おじいちゃんの成年後見人に同意権がない以上、医療行為を受けられないのもやむを得ない、という対応はとれるものではありません。

 

2004年1月発行の千葉家庭裁判所「成年後見人のしおり」では、「親族がいない場合、親族からの協力が得られない場合、緊急を要する場合、病院が特に求める場合には、救命に必要な医療措置として手術や治療への同意を求められたならば、後見人がその権限に基づいて、同意したり、同意書を書くことは差し支えないと考えられます」と説明しています。

このように、成年後見人には原則、医療行為の同意権がないとされているにもかかわらず、実際の現場では、医療行為の同意が求められるという矛盾があります。

 

今後、成年後見人の医療行為の同意については,立法で解決していくべきです。

詳しくは、日本弁護士連合会「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱(2011年(平成23年)12月15日)をご参照下さい。

乳児院・児童養護施設の評議員になりました

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 私はこのたび、社会福祉法人同仁学院の評議員になりました。

 同仁学院は、乳児院・児童養護施設などを運営しており、社会的な養護を必要とする子どもたちの自立と子育て家庭の支援を行っています。

 

 そもそも、評議員とは何かというと、社会福祉法人が適切に運営されるようにチェックする役割をする人です。平成29年4月以降、すべての社会福祉法人で評議員会を設置することが義務付けられています。

 

 乳児院や児童養護施設で、弁護士が評議員になっている施設は、まだ少ないと思いますが、より良い子どもたちの支援がなされるためにも、弁護士がもっと乳児院や児童養護施設に連携していかなければならないと思います。

 そのために何ができるのか、私も微力ながら、頑張りたいです。

LGBTQに関する本の紹介について

こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

小学校、中学校からのLGBTQに関する弁護士会への授業依頼が、以前より増えている印象です。

子どもたちには、「みんな違ってみんないい」ではないですが、多様性のすばらしさを伝えられたらと思います。

 

ここでは、LGBTQに関する、おすすめの本を紹介したいと思います。

 

① いろいろいろんなかぞくのほん

  母子家庭、父子家庭、お父さんお母さんがいない祖父母の家族、里親の家族、同性愛同士の家族など…

  多様な家族がイラストで描かれていて、子どもにもわかりやすいです。

 

② レインボーフラッグ誕生物語 セクシュアルマイノリティーの政治家ハーヴェイ・ミルク

  映画にもなったミルクの話が書かれています。

  LGBTの象徴であるレインボーフラッグの誕生秘話が書かれています。

  とても色彩が豊かな本です。

 

③ 13歳から知っておきたいLGBT+

  いろいろなLGBTQの当事者の方の意見が書かれており、決めつけは厳禁だと勉強になりました。

  とても参考になる本ですが、13歳には少し難しいと思います。 

 

 

養育費に関する公正証書等の作成促進補助金(さいたま市)

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 今日は、さいたま市の補助事業についてご紹介いたします。

 令和3年6月1日から、「さいたま市で養育費に関する公正証書等作成促進補助金」の支給が始まります。

 

 ひとり親家庭の方が、養育費に関する取り決めを行い、きちんと養育費をもらえるようにすること(債務名義化)を支援するため、養育費に関する公正証書を作成する際にかかる本人負担費用を補助する事業です(令和年4月以降に作成した文書が対象)。

  対象経費金額(上限万3000円)で、予算の範囲内で交付されます。

 

 素晴らしい取り組みだと思います。

 母子家庭の方で、養育費をもらっていない方が、割にも上ります。養育費の不払いが、母子家庭・父子家庭の貧困につながっています。

 養育費の不払いの原因として、養育費の取り決めがきちんとなされていないことがあります。

 公証役場の公正証書や、裁判所の離婚調停で取り決めをされた場合には、相手方が決まった養育費を支払わない場合に、給与を差し押さえるなどの措置をすることができます。

 しかしながら、何も取り決めがない場合には、そのような現実的な回収手段がないのが現状です。

 

 さいたま市のこのような補助の仕組みを利用して、子どもたちの養育費の支払いが確保されるように、離婚に際して公正証書が作成されることが、むしろ一般的になってほしいと思います。

 詳しくは、さいたま市のホームページをご参照下さい。