弁護士

遺言書の付言事項が大切です

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 最近、遺言書を作成して欲しいとの出張相談依頼が増えています。

 遺言書作成の出張相談の方法についてですが、私が、老人ホームに入居されている70代から90代くらいの依頼者のところに、その御家族と伺うことが多いです。

 そして、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、私が直接会えず、老人ホームの待合室のリモートでお話させていただくことがほとんどです。

 

 面談の中では、遺言書を作成される方のお気持ちをていねいに聞き取って、その方の思いが反映されるような遺言書を作成させて頂いております。

 具体的には、ただ「長女に私の財産をすべて相続させる。」等の内容だと、他のご兄弟も納得ができない場合があるので、例えば「一郎・二郎も大切な息子で、とても感謝しているけれども、やっぱり一番私の介護や見舞いについて世話になったのは花子だから、私の最後のわがままとして、花子に財産を譲ることを許してほしい。」というような内容の遺言書を作成することが多いです。

 

 このように、どうしてそのような遺言書の内容になったのか、できる限りその人の気持ちが書かれることによって、残された家族の気持ちが穏やかになることがあります。

 

 遺言書については、つい相続する財産やその分け方に焦点が当たりがちですが、どうしてそのような遺言に至ったのか、遺言者の気持ちを記載した付言事項こそ大切です。

未成年後見人制度の現状と課題 実際の事例から

 こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 本日、東京オリンピックの最終日に、埼玉県社会福祉士会の子ども家庭支援員会・ぱあとなあの合同研修として、未成年後見人制度についての研修会を実施しました。

※未成年後見人制度については、以前の記事もご覧ください。

 

 研修会のタイトルは、「未成年後見人制度の現状と課題 実際の事例から」というもので、

 

・南浦和はらだ法律事務所 弁護士 原田茂喜 先生

・新埼玉法律事務所 弁護士 村松綾子

・スクールソーシャルワーカー 松本恵子さん

 

の3人で、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、厳戒態勢の中、zoomで実施しました。

 この研修会には、50名近くの様々な専門家の方(市役所職員・児童養護に携わる方・社会福祉士等)にご参加いただきました。本当にありがとうございました。

 

 そもそも、未成年後見人制度とは、両親が亡くなったり、両親から虐待された子どもたちのための制度です。

 例えば、未成年後見人は、親に代わって、賃貸アパートの契約をしたり、携帯電話の契約をすることができます。

 

 このように、未成年後見人制度は、子どもたちを支える重要な制度です。

 しかしながら、埼玉県では、児童相談所が申立てをした案件のみ、未成年後見人の報酬助成がされており、それ以外は行政の経済的な支援が受けられない状態です。 

 これでは、本当に支援が必要な子どもたちを支えていくことができません。

 今後は、未成年後見制度の利用拡大のために、報酬助成の強化が必要です。

 また、予算だけではなく、未成年後見人の担い手を養成して人を確保することも大切なことだと思います。今回の研修も、未成年後見人の担い手を確保するための大切な制度です。

 今後は、埼玉県社会福祉士会も、未成年後見人について積極的に取り組んで行く予定です。

 

 養育能力が低いと思われる家庭で育つ子どもたちが、アパートで暮らす、携帯電話を契約できる等、当たり前の環境を享受できるよう、未成年後見人制度の利用拡大に向けて、私も微力ながら頑張っていきたいと思います。

小学生に対するLGBTQの講義について

こんばんは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

今日は、埼玉県内の某小学校で、LGBTQに関する講義をしてきました。

村松がLGBTQに関する概説の講義を行い、その後、生徒さん、先生、埼玉弁護士会の吉田奉裕弁護士が、すばらしい寸劇をしてくださいました。

 

「同性婚が認められる国はどれくらいなんですか?」

「どうして日本には同性婚がないんですか?」

など、子どもたちからもさまざまな質問をしてくれました。

(「弁護士の年収はいくらですか?」なんていう質問もありました。笑)

 

子どもたちは、思いやりの心があって、本当にすばらしかったです。

私も、今後の出張講義の機会があれば、またがんばりたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

成年後見制度と予防接種の同意について

 こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

 

 成年後見人として、社会福祉士の方から、認知症等の方の成年後見人になった場合、ご本人の予防接種についてどのようにすべきかと、問い合わせがありました。

 以下、私のできる範囲で回答をしたいと思います。

 

 前提として、

〇新型コロナウィルスの予防接種を受けることは、強制ではありません。

〇成年後見人には、原則として、本人である成年被後見人の医療行為の同意権はありません(以前のブログを参照して下さい)。

 

 しかしながら、例外的に、予防接種法上、成年後見人には、成年被後見人である本人の予防接種について同意権があるとされています。

 具体的には、予防接種法令上では、予防接種を受けるに当たっては、接種を受ける方又はその保護者から書面により同意を得ることとしており、この「保護者」には後見人が含まれます。

 以下、厚生労働省ホームページの、成年後見制度利用促進ニュースレター(令和3年3月22日)の、新型コロナウィルスの予防接種について記載されているものを、できる限りわかりやすく説明をします。

 

A.本人の意思確認ができる場合

 認知症と言っても、個人差があります。

 本人の意思確認ができる場合には、まず、成年被後見人である本人に、新型コロナウィルスの予防接種に関する必要な情報をしっかりと伝えてください。その上で、本人の意思を可能な限り確認してください。

 

① 本人の同意が確認できた場合

 本人による署名

② 本人の同意が確認できるが、本人の署名が困難

 代筆(*代筆するのは、成年後見人・施設の職員等)

③ 本人の同意は確認できるけど、本人に会えない場合

 オンライン面会ができる場合には、本人と直接話をして、必要な情報提供や意思確認をすることが望ましいです。 もしもそれが叶わない場合には、施設、医療機関等の職員に (ア) 本人へどのように情報提供したのか、(イ)本人がどのような状態でどのように意思表示をしたのか、 確認してください。また、その際には、 (ウ) 接種後の本人の様子の見守りを依頼し、変化がある場合には詳細に記録し、成年後見人に連絡が欲しいこと、を伝えてください。

 

B.本人の意思が確認できない場合にどうするか?

 (厚生労働省)ご本人の接種の意思を確認することが難しい場合は、家族や医療・ケアチーム等、成年被後見人ご本人の周りの方と相談しながらご判断いただくようお願いいたします。成年後見制度利用促進ニュースレターを引用しています)。

 

 なんだか、とてもあいまいな書き方です。家族がいない人、医療・ケアチームがない場合に、どうするべきなのか記載されていません。以下は村松の私見です。

 正解はありません。

 ただできる限り、成年後見人として、本人の意向を推測すべきですし、いろいろな情報を集めるべきです。

 

 具体的には、

・本人の家族に相談をする。

・本人の主治医・施設職員に相談をする。

・本人の意向を、今までの事情から想像する。

 結論として、その上で、成年後見人として同意をしてもいいと思います。

 あえて医療行為の同意権がないから、判断を主治医の先生に従います、ということもでいいと思います。

 

【参考】 

◆予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)抄

第二条七 この法律において「保護者」とは、親権を行う者又は後見人をいう。

◆予防接種実施規則(昭和三十三年厚生省令第二十七号)抄

(説明と同意の取得) 第五条の二 予防接種を行うに当たっては、あらかじめ被接種者又はその保護者に対して、予防接種の有効性及び安全性並びに副反応について当該者の理解を得るよう、適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。

◆接種を受けたことによる副反応について

(接種を受けた後に副反応が起きた場合の予防接種健康被害救済制度)

 一般的に、ワクチン接種では、副反応による健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が、極めて稀ではあるものの、なくすことができないことから、救済制度が設けられています。

 新型コロナワクチンの接種についても、健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく救済を受けることができます。 もし、成年被後見人等ご本人に健康被害が生じた場合は、ご本人の住民票のある市町村にご相談いただき、 申請書の準備等のサポートをお願いいたします。

成年後見人と医療行為の同意について

こんにちは。弁護士・社会福祉士・保育士の村松綾子です。

本日は、成年後見人が医療行為の同意ができるのかについて、お話をしたいと思います。

 

医療行為の同意は、本人のみが行うことができる一身専属権であり、成年後見人に同意権はありません。

したがって、まずは本人に医療行為の同意について意思決定を行っていただくのが大前提です。

 

しかしながら、本人が認知症などで、医療に係る意思決定が困難である場合にどうするか?という問題があります。

家族のいる方は、まず家族の同意をとることになりますが、家族がいない人はどうするのでしょうか。

 

実際の現場では、家族がいない成年被後見人に成年後見人が就いている場合には、成年後見人に同意を求められることがあります。

例えば、認知症のおじいちゃんが交通事故に遭い、緊急の手術をしなくてはいけない場合に、おじいちゃんの成年後見人に同意権がない以上、医療行為を受けられないのもやむを得ない、という対応はとれるものではありません。

 

2004年1月発行の千葉家庭裁判所「成年後見人のしおり」では、「親族がいない場合、親族からの協力が得られない場合、緊急を要する場合、病院が特に求める場合には、救命に必要な医療措置として手術や治療への同意を求められたならば、後見人がその権限に基づいて、同意したり、同意書を書くことは差し支えないと考えられます」と説明しています。

このように、成年後見人には原則、医療行為の同意権がないとされているにもかかわらず、実際の現場では、医療行為の同意が求められるという矛盾があります。

 

今後、成年後見人の医療行為の同意については,立法で解決していくべきです。

詳しくは、日本弁護士連合会「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱(2011年(平成23年)12月15日)をご参照下さい。